ここでは、理学療法士の担う役割を、理学療法士の起源から順序立ててご紹介します。
リハビリの誕生は戦争がきっかけとなっており、戦争で負傷した兵士を在宅復帰・社会復帰させるための明確な方法が当時はなく、そこで発祥したのがリハビリテーションという考え方です。
当時のリハビリテーションは主に負傷した兵士の職業訓練が中心に行われ、現代のリハビリテーションでも仕事復帰をするためにリハビリを実施しますが、その原点がこの時代にあります。
理学療法士は怪我や病気で体に負った障害を回復するために現場の第一線で活躍します。
理学療法士の役割は体に何らかの問題を抱える患者さんに対して、理論に基づいた治療を展開していくことにあり、高い専門性を持って患者さんのリハビリテーションをサポートします。
リハビリの専門家である理学療法士は、患者さんやこれからリハビリを受けようとしている人の人生に大きく関わり、『病前と同じような生活を取り戻す』ために重要な役割を果たしています。
理学療法士と作業療法士は同じリハビリの職種であり、患者さんの病気の回復を目指すといった方向性は一緒です。ただ理学療法士と作業療法士はリハビリを行う専門性に違いがあります。
【理学療法士の専門性について】
理学療法士は寝返る、起き上がる、立ちあがる、または歩くなど、日常生活で必要な動作ができるように回復をサポートする動作の専門家です。体の機能や動作の回復を促し、自立した日常生活が送れるようにバックアップします。
【作業療法士の専門性について】
作業療法士は日常の動作である食事や料理、または手工芸、園芸、レクリエーションまであらゆる作業活動を通して、体と心のリハビリを行う専門家です。
理学療法士との大きな違いは『作業活動』を通して行うという点や精神分野も扱う『心』のリハビリも兼ねているという点です。
リハビリを理解する上で一つ知ってほしいことがあります。それは一個人の力だけで患者さんが回復しているのではないということです。
理学療法士は患者さんとの距離が近いため、あたかも自分一人でリハビリを行っていると錯覚をしてしまいがちですが、そうではありません。患者さんはチームでよくなります。
患者さん自身の頑張る力はもちろん、患者さんを取り巻く、家族の力や医師、看護師、同じリハビリスタッフの作業療法士や言語聴覚士、相談員、などたくさんのサポートする力が合わさって患者さんは回復を図ることができます。個人プレーとなり連携をおろそかにしないことが重要です。
患者さんは怪我や病気で障害を負うことで、『自分らしさ』を失ってしまうことがあります。
※日常生活の主な動作…ベッドから起き上がる、寝返り、立ち上がる、座る、歩く、昇降等
※日常生活の主な行動…着替える、顔をあらう、入浴する等
今まで何も考えず普通にしていた日常生活の動作(※)や行動(※)が頭ではわかっていても思うように自分の身体が動いてくれなくなると人は戸惑い、絶望、悲しみ、苛立ち、諦めと様々な感情が渦巻き押し寄せます。心を固く閉ざしてしまうこともあるでしょう。これまで「やれたこと」を「やれるよう」にすることが、「やりたいこと」に繋がります。そしてその人その人の生きがいができてくるのではないでしょうか。セラピストはリハビリを通して患者さんの心に寄り添い、その人にあったプログラムをもとに筋力や関節の動きの向上を共に目指すのです。
体が不自由になってしまったために「やりたい」と思っていることができず気持ちも塞ぎ込み、日常に「必要なこと」も行えず、遠慮がち、または我慢しがちになってしまい、「その人らしく」というものが障害によって失われてしまいます。
理学療法士は患者さんの「やりたいこと」や「必要なこと」を実現させることに全力を注ぎ、患者さんが「その人らしく生きる」、「幸せになる」ことを支援することこそが理学療法士が担うべき役割です。
今日本は高齢化社会に突入し、65歳以上の人口は、2019年に「団塊の世代」が65歳以上となった2015年に3,387万人となり、「団塊の世代」が75歳以上となる2025年には3,677万人に達すると見込まれています。
高齢者の取り巻く状況は複雑です。経済状況や、健康状態、高齢者の一人暮らしや老々介護の世帯が増えていることなど、一個人だけでの解決は難しく、専門家の介入が必要な状態です。
この状況をサポートできる職種が理学療法士と心から信じます。
特に在宅の状態、身体の状態、医療サービス、行政サービス、といった多様な専門的な知識をもつ理学療法士だからこそサポートできると思うのです!