デイサービス(通所介護)起業・独立の留意点

日本は2025年あたりからさらに、高齢者が増え続けるから起業するなら介護業界だと短絡的に考えるのは危険です。

確かに成功している経営者もいますが、日本は基本的にデイサービスは飽和状態です。いくら介護技術の高いスタッフを集めて施設をオープンしても、最初から社長やリーダーの想いが希薄だったり、ビジネスとしての能力が低いとすぐに廃業の危機に追い込まれてしまいます。

【1】デイサービスは、どうやったら黒字化するのか

明確な黒字化に対する「知識・スキル」

多くの施設サービスは、(1)”経営重点指標” (2)”施設の強み” (3)”先行管理収支” を活用することによって、赤字経営を計画的に黒字安定化することが可能です。

事実、コンパス(起業2年目時点2店舗)も開業時点で毎月200万程度の赤字(予定通り)でしたが、明確に黒字化できる目途が立っていたので、起業後すぐ直営で2店舗目の出店が可能だったのです。 

※もちろん、両店舗とも短期間で黒字化しております。

赤字の理由

まず赤字の場合、短期的に見ると明らかなのは、下記の理由が複雑に絡み合った現実となっていることによります。

(1)損益分岐を超えるだけの利用者契約ができていない(ケアマネジャー居宅営業・集客する時間を確保できてい ない)。
(2)ご利用者都合、ご家族都合による休みが多く、出席率が低い(切実な声が耳に入るも情報として把握できていない)。
(3)出席率が低いため、当初の見込み月間利用者数と実績数にギャップが生まれる。
(4)人員基準が決まっていて、労務コストはほぼ読み通りになるはずなのに、従業員の定着率が低く、 コストが安定しない。
(5)従業員がころころ変わる。従業員が定着しないから、利用者様の利用中止が相次ぐ。結果、ますます、利用実績が落ち、売上が下がる。
(6)コストは人件費や家賃はじめ、ほぼ固定に近いので、売上収入減分は、確実に利益減につながる。

机上計算で黒字にする方法

机上で黒字にするのは簡単です。コストよりも売上が高ければ良いのです。売上が低ければ、コストを下げる。 コストが下げられないのであれば、売上を上げる。簡単です。左辺が売上算出式です。

契約人数×月間平均利用回数(要介護)×利用平均単価×出席率>コスト(人件費、家賃、一般経費等) ポイントは上式の青文字部分「出席率」です。予約表で満員になっているのに誰も来なければ、売上はゼロです。

実際に黒字化する方法

従業員一人一人が何の目的で、今の仕事をしているかの共有が最も大切です。それが、従業員定着への第一歩です。

利用者様がなんのために通所されているのか?をいつも考え、利用者様が、元気になって、幸せになるために どうするか?の一点に対し、全力を注げる従業員育成が究極のポイントとなります。

(1)利用者様が達成したい目標を支援する生活回復の仕組みがあること。すなわち設定目標と実際の状況との差異を知る仕組み、やる気を出して貰う仕組みがあることです。これがあることで出席率が大幅に向上されます。
(2)利用者様目線で経営をすること 。利用者様を満足させるのではなく、利用者様が満足をされる経営をする。「を」と「が」の一文字違いですが、この違いがとても大きいのです。
(3)利用者様とのコミュニケーションができる人創りの仕組みがあること 。私たちの仕事は工場で作られた製品を販売しているわけではありません。人と人が関わる瞬間に「サービス」という商品が産まれます。商品を産み出すのは、現場の従業員です。その従業員を育成する仕組みがなければ、不良品ばかりが産まれます。
(4)経営安定のための営業をしっかりやること。自社の強みを営業先に「正確」に伝えるアピール方法の開発、そして、数値の目標と実績管理を可能な限り先行して管理し、それの重要性を従業員にも理解させること。これが契約人数の増加に繋がります。
「四方良し経営」

従業員の幸せに良し。事業者の経営安定に良し。

取引先(ケアマネジャー、関係各社)の幸せに良し。社会の幸せに良し。

「四方良し経営」をしっかりやることが、黒字化の王道です。

【2】開業・独立するには

上手な介護事業(デイサービス)開業・起業支援の選び方

【POINT1】

Q:脱サラで介護業界未経験、しかも異業種からの開業で、大丈夫でしょうか?

A:大丈夫です。業界未経験だからこその“強み”があります。

いくつかのポイントを押さえることによって必ず成功します。

未経験者でも介護事業の独立開業・創業起業は可能です。特に通所介護開業(デイサービス開業)はオススメで、現実に人気があります。 しかしながら、現場業務が分からないと介護事業開業後の業務運営ができないので、いろいろと手を打つ必要があります。 経営のことが分かっている他業種の経営者が異業種参入した場合はまだしも、今までサラリーマンなど経営経験の無かった場合、経営、会計、税務、資金繰りでつまずきかねません。 ただし、開業経験者がサポートをすれば、介護事業を開業するといっても特別なことではなく、介護事業未経験者の方でも、開業することは可能です。

【POINT2】

介護事業未経験者の独立起業方法は以下の3つの方法があります。

(1)FC(フランチャイズ)加盟
(2)コンサルティング会社利用
(3)立ち上げ経験者を雇用
(1)FC(フランチャイズ)加盟について

介護事業独立開業起業で比較的多いのはFC(フランチャイズ)加盟検討でしょう。その他、コンサルティング会社の利用、そして、うまく立上げ経験者を見つけてサポートしてもらう、などが一般的です。 FC(フランチャイズ)は、 「ノウハウを買える」「困った時のサポートがあり精神的に安定する」といった大きなメリットがあります。ただし、事業が成功するか否かは結局、自己責任である割に、「自身が目指す方向での事業推進がやりづらい」「初期資金が相当必要(デイサービスだと加盟金ロイヤリティだけでトータル500万円以上のお金は普通)」「介護保険の仕組み上、利益額に上限があるにもかかわらず、ロイヤリティを永遠に払い続けなければならない」など、デメリットも知っておかねばなりません。

(2)開業時のコンサルティング会社利用について

以下のメリットがあります。

「開業時までに、まずノウハウ、知識を積めば、その後目指す方向で事業を行える 」

「FC(フランチャイズ)に比べて費用ははるかに安い(会社によります)」

「ロイヤリティもかからない場合が多い」

「コンサル会社経営者の多くは介護事業を経営していた会社から独立された方なので、信頼できれば十分に介護事業開業に必要な知識が得られる 」

一方、コンサルティング会社を選ぶ基準(実際、運営経験があり、成功させているのか、机上の空論でないのか)をしっかり持たないと 多くは「ハズレをつかむ」ことになる というデメリットもあります。ちなみに、ネットで探すと出てくる社会保険労務士、行政書士が打ち出している「福祉施設の立上げ」「開業時のお手伝い」は、多くの場合、あくまでも介護事業起業時に必要な書類作成や、補助金・助成金も含めた申請業務代行のみです。後で税金アドバイスなどで知り合いの税理士なども別途紹介されたりします。 基本的に、士業の先生を無料で使えるということはありませんし、介護実務経験があったとしても浅いです。ここをマークしておかないと、物件探しや請求業務にさえ苦戦して開業してから大変なことになります。

(3)立ち上げ経験者を雇用

経験者雇用に関しては、うまくその人間と知り合えて(確率は低い)、かつ、一緒に長い付き合いをしていける人間なのかなども、雇用形態によっては考えなければなりません。ただし、考え方によっては、開業コストはほとんどかからないともいえるかもしれません。 デメリットは、立ち上げ経験者自体と出会う可能性が低いことと、雇用継続の責任です。

【POINT3】

開業時に経営者が集中すべきこと。

介護事業は税務知識・社会保険・労働保険の知識が必須ですが、開業時に経営者はこれらの業務は専門家に任せ、自分は介護事業に集中するのが得策です。介護事業では、一般業種とは異なった場面が多々あります。特に消費税などは一般業種とは異なる課税非課税の判断が難しい事例などがあるため、それなりの会計・税務の知識が必要です。

また、運営を始めると、社会保険、労働保険の知識も必要なことに気が付きます。介護未経験者では、介護を勉強しながら、経理・総務を勉強するということも難しいので、開業時は本業優先で、信頼でき、経験のある各種専門家を活用すべきです。

【POINT4】

FC(フランチャイズ)加盟か?

デイサービスのコンサル会社を活用か?

この問題は、開業する方のタイプや考え方によって、答えが異なります。どちらが良いとも言えませんが、開業する方の資金状況、開業する目的、将来のありたい姿によって選択するものです。 論理的に可能かもしれない、提示された損益計算書で、判断しないことが肝要です。FCにしろ、コンサル会社にしろ、代表者に直接会って、質問して詳しい内容を確認することをお勧めします。

いずれの判断にせよ、介護業界の経験がない場合は「FC(フランチャイズ)に加盟する」「介護事業立上げ経験者を雇う」「自身で現場研修を行うコンサル会社を見つけて、現場研修は当該会社から受ける」「詳細な現場管理業務は自身で現場実務を積みながら学ぶ」のうちいずれかを選択することになるでしょう。

デイサービス開設 全体概要

【開業前準備】

(1)商圏分析/市場調査

出店候補地の実態調査と同時に候補地のデイサービス供給率等、基礎データが必要です。

(2)事業収支&資金借入

介護保険事業者の指定申請や金融機関借入、リース時に欠かせない事業収支を作成します。 さらに、全く事業が初めての方は保証協会等の融資制度を紹介し、書類作成や申込のサポートをします。

(3)法人設立

介護保険事業者は法人でなければ指定を受けられません。株式会社等の法人設立のアドバイスをします(印紙代や登録免許税及び設立手数料は別途)。

【建築設計・施工】

(4)建築・内装プラン&設計・施工

介護保険事業者の指定基準や建築基準法等をクリアしたプランを作成します。実務に基づいたプランは、無駄がなく、建築や内装工事におけるコストダウンになります。さらに、プランに基づいた設計施工を行います。経験豊富な提携設計会社及び建築会社により、設備や素材一つまで、細かな仕上げができます。

(5)介護保険指定申請

介護保険事業者になるには都道府県の事業者指定が必要です。事前協議から申請迄、相当数の書類作成を全て行い、確実で速やかな指定を目指します。

(6)人材募集

事業者指定に定められた看護師や生活相談員等専門員の採用をします。どのタイミングで、どのような人材募集が望ましいのか、経営の立場から勘案します。

(7)営業活動&営業ツール

事業所データリストを使っての営業訪問や内覧会、見学会の開催等で、 チラシ募集やポップ作りも必要です。 営業用事前パンフレット、開業後正規パンフレット、インターネットホームページ作成等あらゆる宣伝・販促提案を行います。

【運営・営業開始】

8)経営者、管理者、介護職研修 & 契約書他、運営書類

サービス業のプロとしての研修が必要です。継続が前提ですが、初期研修期間は基礎研修も併せ概ね2週間程度は必要でしょう。 さらに、運営規則や重要事項説明書・利用者契約書等、通所介護に必要な書類等が必要です。

(9)経理・労務手続き&助成金申請

介護保険報酬の申請方法や一般経理、また、労務関連としては雇用保険・社会保険他申請手続き等も必要です。 介護保険助成金や地域の奨励金等提案できるあらゆる助成金を申請。社会保険労務士が全て代行できます。(代行・申請は、助成金獲得時の成功報酬)

小規模デイサービス事業の収支モデル

小規模デイサービス事業の内訳

◆オプション

法人設立 建築設計・施工

助成金申請 事務代行

【3】デイサービスの指定基準(参考)

【1.法人格があること】

(1)法人格がない場合

法人には、株式会社、合同会社、NPO法人、社会福祉法人などの法人があり、これらの法人格が必要です。また法人の定款に記載する「事業の目的」の文言については、当該事業を行う旨の記載をするよう、特に注意してください。

※新会社法の施行

平成18年5月1日から施行された新会社法において株式会社の設立は、資本金制度(1000万円の出資)の撤廃、銀行発行の保管証明不要(発起設立の場合)、取締役1名から可能と設立しやすくなりました。

(2)法人格がある場合

既に法人がある場合でも、新規に介護サービスを行う場合や異業種参入する場合において、定款の「事業目的」欄に、当該事業を行う旨の記載がない場合は、法務局において目的変更登記の手続きが必要になります。

【2.人員基準】

[利用定員が10人を超える場合]

(1)管理者・・・・・常勤の管理者1人以上。

※資格要件は、特にありません。

(2)従業者

・生活相談員・・・社会福祉士、社会福祉主事のいずれかの資格をもった人を1人以上。

※都道府県によっては、生活相談員の資格を介護福祉士あるいはケアマネを認めているところがあります。ご確認ください。

・看護職員・・・・・看護師、准看護師のいずれかの資格をもった人を1名以上。

・介護職員・・・・・資格要件はありません。

15人までは、1人以上、それ以上15人を超える場合は、利用者5人増すごとに介護職員は1人増員が必要。

※参考

利用定員:必要人員

~15人:1人以上

~20人:2人以上

~25人:3人以上

・機能訓練指導員

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、准看護師、柔道整復師、あんまマッサージ指圧師のいずれかの資格をもった人を1人以上

【注意事項】

生活相談員または介護職員のうち1人以上は常勤であること

[利用定員が10人以下の場合](小規模デイサービス)

(1)管理者・・・・・上記利用定員10人以上の要件と同様です。

※資格要件は、特にありません。

(2)従業者

・生活相談員・・・資格要件は、上記1.の利用定員10人以上の要件と同様です。

・看護職員又は介護職員

上記利用定員が10人を超える場合と異なり看護職員又は介護職員のいずれか1名以上で足ります。

・機能訓練指導員

上記利用定員10人以上の要件と同様です。

【3.設備基準】

通所介護の設備基準としては、以下の基準があります。

(1)食堂及び機能訓練室

・・・・・合計面積が(利用定員)×3㎡以上の広さであること。

※狭い部屋を多数設置することにより面積を確保することは不可です。

(2)静養室・・・・ 複数の利用者が同時に利用できる適当な広さ。

専用の部屋を確保すること。

(3)相談室・・・・ 遮へい物設置など相談者のプライバシーに配慮されていること。

(4)事務室・・・・ 職員、設備備品を配置できる広さ。

(5)便所  ・・・・ 介助を要する者の使用に適した構造・設備とすること

※複数設置で、車いす用便所とすることが望ましい

ブザー、呼び鈴等、通報装置が設置されていること

(6)その他法令確認

建築基準法や消防法などの基準に適合しているか、都道府県の建築確認課や消防署で確認が必要です。

◆機能訓練特化型デイサービスは、利用者を午前、午後と分け半日で行い、食事、入浴を省いて機能訓練、身体介護に重点を置いているのが特徴といえます。

午前、午後と分けて行われるので、2単位型とも言えます。また、利用者定員を10人ですと、機能訓練室は10人×面積3㎡=30㎡以上必要ですので、従来型の1単位のデイサービスでは、1日10人までしか行うことができません。

*利用者様を自宅から事業所、事業所から自宅へと送迎していますので、専属のドライバーを雇う以外でも、職員が車を安全に運転できるとよい。

機能訓練特化型デイサービスのように、午前、午後と2単位にすると、午前は利用者定員10人、午後は利用者定員10人と1日の利用者は合計20人まで可能となります。

弊社に経営・フランチャイズの加盟のご相談は下記よりお願い致します。


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